Dead Flowers

THE YELLOW MONKEY「SICKS」

SICKS ジャケット

お気に入り度
★★★★★

Released Jan 1997

1.RAINBOW MAN

2.I CAN BE SHIT, MAMA

3.楽園

4.TVのシンガー

5.紫の空

6.薬局へ行こうよ

7.天国旅行

8.創生児

9.HOTEL宇宙船

10.花吹雪

11.淡い心だって言ってたよ

12.見てないようで見てる

13.人生の終わり (FOR GRANDMOTHER)

イエモンの最高傑作は本作『SICKS』か次作の『PUNCH DRUNKARD』のどちらにするべきかよく迷います。ちょっと前なら『PUNCH DRUNKARD』の気分だったのですが、『SICKS』の方が今はかなり優勢、うっふーふぅふふーの気分なので、本作を最高傑作と一旦結論付けておこうと思います。

バンド自身もファンも認める最高傑作と名高い本作ですが、イエモンをよく知らない人に薦められるかといえば、ちょっと難しいかもですね。というのも、結構ダークな作風で長い曲も多く、またシングル曲は「楽園」のみという、とっつきやすいアルバムではないので。前二作では売れ線でやったんだから、好きにやらせてもらうという意気込みを感じる構成です。

あと『SICKS』から『8』までがイエモン黄金期と私は思っていまして、その理由はサウンドの迫力が大きく増したからなんですよ。録音のおかげなのか、バンドの演奏力が大きくアップしたからなのか、ダイナミズム溢れるサウンドで、『SICKS』より前のサウンドが軽く聴こえてしまうほど。自信に満ちたサウンドというべきなんですかね。今作は私にとってそんな黄金期を告げる一枚になっております。


大作感の強い楽曲が多いという『SICKS』の特徴が、初っ端から7分越えという「RAINBOW MAN」があいさつ代わりの一発ってな具合でかまされています。ライトなファンを思いっきりふるいにかけていて、もう最高。長年のイエモンファンの人たちも、迫力が増したサウンドとともに、このアルバムは今までとは違うという印象を受けたのではないでしょうか。

その後に続くのが、ヘヴィなギターが印象的な「I CAN BE SHIT, MAMA」、妙な桃源郷へ行ってしまったような不思議な曲「楽園」、人気バンドになった自分たちが『Jaguar Hard Pain』の「ROCK STAR」に通ずる歌詞を歌う「TVのシンガー」と、もうこれで(私にとっては)完全につかみはバッチリという感じでした。なんならこの時点で『SICKS』は良いアルバムだと思った記憶がある。

そしてこの後『SICKS』を代表すると思っている曲が二つ出てきます。一つは「紫の空」という曲。ジャズテイストなアレンジながら、歌詞はSM的な妖しさ漂うダークで情念渦巻く一曲。サビに向かって徐々に演奏がハードに盛り上がっていくところが魅力的。アルバムの中で一番感情が込められた曲ではないでしょうか。

そしてもう一つはこのアルバムのハイライト「天国旅行」。病的な世界観とダイナミックな演奏、8分半というイエモンとしては異例の長さも相まって、『SICKS』の魅力を一曲に封じ込めたような曲です。最初から最後まで引き込まれる曲で、特にラストの叫びのところは、毎回心揺さぶられますわ。


濃厚な前半に比べると、後半はさすがに分が悪い感じではありますが、魅力的な曲は多くあって、ダブルボーカルで分裂症的な世界を表現した「創生児」、歌謡曲的なメロディアスさとやはり病的な雰囲気もある「花吹雪」が印象的。ダークな世界観から一転したような「HOTEL宇宙船」「見てないようで見てる」のようなコミカルな曲も良いアクセントになっていて、アルバムの懐の深さを表していると思いました。こうしてみると、アルバムのほとんどが印象的な曲ばかりで、聴き終わったときは、シングル曲が一曲しかないアルバムだということを忘れてしまいます。

思い入れのある名盤の条件の一つとして、アルバム全体の世界観に引きずられる引力、または魔力を感じるかどうかが大きな要素だと思っていますが、このアルバムはまさにそういった力を感じる典型例のアルバムだと思います。


「淡い心だって言ってたよ」のでもどうして大切という字は大きく切ないのかなという歌詞が、うまいこと言おうとしているみたいで好きじゃなかったのですが、AIが「大切な時間や想いが、切なさを伴うものであるという心情を表現しています。」という風にたまたま教えてもらい、腑に落ちて歌詞も許せるようになりました。AIより感受性がない私、どうですか。うっふーふぅふふー。