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お気に入り度 Released Mar 1993 |
2025年現在、ChatGPTといったAI技術が盛んになっている昨今、技術系の記事も大半がそういった内容で、正直辟易している私です。そんなAIについて聞くたびに思い出されるのが、この「ブリキの迷宮」だったりします。そして同じように考えている人はたくさんいると思うので、何番煎じのレビューだろうか。
謎のトランクを開いた先にブリキ仕掛けのものがたくさんある不思議な島。しかしそこでドラえもんが攫われてしまう。ドラえもんを助けるため、ロボットが支配しているチャモチャ星へ向かうのび太たち・・・というストーリー。
前作「雲の王国」でもドラえもんが故障するという場面がありましたが、今作ではもっと強烈な目にあっています。ドラえもんがひょんなことから敵につかまってしまい、その後電撃で拷問され、完全に故障してしまったら、海に捨てられてしまうという始末。意識自体は残っているのですが、のび太たちと二度と会えないのではと絶望するところは、なかなか残酷なシーン。そんなことがあったからなのか、のび太・しずか・スネ夫・ジャイアンの4人で一致団結してドラえもんを助けに行くのは、不安はあるけれど仲間がいるという安心と頼もしさを感じました。
チャモチャ星に到着してからは、ジャイアン・スネ夫チームは、敵地への潜入・調査を行い、のび太・しずかチームはタイトルにあるブリキの迷宮への探索と2手に分かれることになります。敵に見つかったり、迷路に迷ったりしたら即終了という緊張感があり、アクション映画のようなドキドキワクワクな感じがあります。
中盤過ぎてから、ジャイアン・スネ夫チームは逃亡中、のび太・しずかチームは迷宮でさまよってしまうという苦境の中、起死回生のドラえもん復活。そこから一気に物事を解決していくドラえもん。今までの苦境は何だったのかというくらい、スピード感あふれる大活躍ぶりを見せていきます。そして最後はチャモチャ星で大暴れして終了。この作品は苦しい状況の前半から、ドカンと一気に反撃していく後半のカタルシスが魅力でありますね。
スネ夫活躍の映画といえば「宇宙小戦争」がよく挙がりますが、この映画も結構な活躍ぶりを見せております。チャモチャ星で食料を作っている工場を見つけた時、そこから逆算して辿っていけば、人間が収容されている場所が分かるというアイデアを思いついたり、ロボットたちに見つかってジャイアンが防戦一方のところに、トラックを運転して逃走手段を確保したり、また最終的には飛行機を運転してロボットから逃亡したりと、この後ドラえもんが色々な問題をあっさり解決してしまうため、あまりスポットライトを浴びていない気がしますが、何気に作戦成功の影の立役者だと思います。
映画でよく苦境に飛び込むのを尻込みすることが多いスネ夫ですが、今回は友達のドラえもんを助けるという目的からか、チャモチャ星へ行くのを渋っていないところは何気に良いところだなあと思います。勇気を出せなかったり、人を出し抜こうとするというころがスネ夫の短所であったのですが、今作ではそんなスネ夫の資質が長所として発揮されたように感じます。スネ夫本当に頑張ったわ。
(追記)その後読み返してみたら、普通にチャモチャ星へ行くのを渋ってました。ワイの感動を返せ。
作中でも何度も語られているように、ロボットや機械といった道具ばっかり頼っていると、自分の力では何もできなくなるぞ。というのが今作のテーマでしょう。ただロボットや機械を否定しているわけではないとも思います。結局物事を解決したのはロボットであるドラえもんの力であるわけですから。
ドラえもんとチャモチャ星のロボットは何が違ったのか、それはロボットと人間の共存ができているかの違いだったのではないでしょうか。のび太たちは友達であるドラえもんが攫われたので、危険を顧みず自発的に助けに行くことを選択していたが、チャモチャ星の人々は考えたり動いたりするのがめんどくさいということで、機械は楽をするための道具であるという認識であり、機械への依存と機械を利用しているだけだったのではないでしょうか。だからロボットたちはそんな人間を役立たずと切り捨て、ロボットが支配する結果になってしまったのかなあと。
こうやって偉そうなことを言ってますが、私自身機械から自立・共存した生き方ができているかと言われると、そうではない訳で。お風呂を沸かしたりとか洗濯するのは、機械無しで自分だけでやるなんてできないですし。仕事しているときも、AIに頼っている部分があるのも事実です。AIが変な回答をしてきたときは、ダメな回答だなとご立腹になったりもしています。そう考えるとチャモチャ星の人たちよりひどい状態だな(汗)
「共存」というふわっとした言葉であるため、具体的にどうすればロボットや機械、AIと共存できるかなんて、今はまだ分からない状態だと思います。人間は利己的な動物であるため、来るAI社会は避けられぬ未来となり、AIに依存する時代がやってくるのでしょう。おそらく今後人類が何十年もかけて、AIとの共存について答えを探していくことになり、その道中で大きな過ちを犯してしまうことにもなるのでしょう。AIとの共存についての答えを出すのもAI任せになっているのならば、もう救いようがないだろうなあ。割とありえそうなのが怖い。
AIというものが身近に迫っている昨今、ドラえもん映画の中で一番リアルに響く作品ではないでしょうか。
私自身が今できることと言えば、自分で考えたり動いたりすることを止めないことだと思いました。機械やAIに全く頼らない生き方は難しいとは思いますが、そんな心構えは忘れないようにしたいですね。
ちなみにのび太は道具に頼らないで済む道具を出してほしいとドラえもんに頼んでいました。落語的なオチでボク大好き。