お気に入り度 Released July 1986 |
1.Losing Touch With My Mind
2.Hey Man
3.Rollercoaster
4.Mary Anne
5.Little Doll
6.2.35
7.O.D. Catastrophe
1980年代イギリスで生まれた、私が世界で一番好きなバンド、スペースメン3のデビューアルバム。このバンドの魅力として、ファズ、フィードバックをガッツリ鳴らすノイジーなギターサウンドがまず挙げられまして、このデビューアルバムはそういった要素が一番分かりやすく表れた作品になっています。
具体的に説明すると、1960年代アメリカのガレージ/サイケバンドに強く影響を受けたサウンドで、乱暴にまとめると、ストゥージズのノイズギターサウンドに、ヴェルヴェットアンダーグラウンドのクールで醒めた雰囲気と催眠的なドローン感覚を混ぜ合わせた音楽性です。
なので、激しいギターサウンドにも関わらず、ボーカルやメロディ、リズムは無表情で醒めた雰囲気で、そのコントラストがたまらないですね。激しさと気怠さという相反する要素が同居しているところがもう本当に最高。
ただ前述のとおり、先人のバンドによる影響がストレートに表れたサウンドで、また収録曲の3曲がカバー曲ということもあり、オリジナリティが薄いということで、スペースメン3の中ではさほど評価されていないアルバムなのですが、個人的にはバンドの個性が十分内包されたアルバムだと思っています。
カバー曲の「Rollercoaster」「Little Doll」は原曲にあったアップテンポな要素がなくなり、ひたすら緩慢で気怠く、酩酊感のあるカバーになっていて、自分たちのものにうまく落とし込んだ良カバー曲になっており、フィードバックやフランジャーのエフェクティブなサウンドが、後に起こるシューゲイザーのルーツを思わせる「Losing Touch With My Mind」、ワンコードでひたすら繰り返してごり押しすることで、時間感覚が薄れていく「O.D. Catastrophe」といった自作曲は、後の作品で大きく開花するバンドのオリジナリティがすでに見受けられます。
この後の『The Perfect Prescription』や『Playing With Fire』といった代表作は、確かに個性的ではあるものの、それ故に難解な部分もあるので、聴きやすさという点において、ベーシックなロックを下地にしたこのアルバムの方が、スペースメン3入門として相応しいのではないかと思います。