Dead Flowers

エニックス「天地創造」

天地創造 ジャケット

お気に入り度
★★★★

Released Oct 1995

『ソウルブレイダー』『ガイア幻想紀』に続く、クインテット社がスーパーファミコン時代に出したアクションRPG第三弾で、SFCの隠れた名作としても名高いゲーム。悪評すらあんまり見ることが無いレベルの評判の良さですが、個人的な印象としては、良くできているゲームだけど、絶賛するほど穴の無い完成度ではないという認識です。

コマンドRPGに寄せた戦闘システム

『ゼルダの伝説』のようなアクションRPGですが、アクション部分は『ソウルブレイダー』の頃から出来は良かったので、今作も操作性良く動かせます。同じアクションRPGながらずっと知名度が高い『聖剣伝説』シリーズより、アクション部分はよっぽど良くできてます(笑)

『ソウルブレイダー』『ガイア幻想紀』はゼルダ的なライフ制でしたが、今作ではレベル制が導入され、うまくアクションができないとクリアできないアクションRPGの難しさが、レベルを上げることでカバーできるようになりました。また属性の相性まで導入され、コマンドRPGの感覚に近くなった戦闘システムになっています。

ただそのレベル制と属性の相性のシステムが、あまりうまく働いていなかった印象です。レベルのバランス調整が大雑把で、レベルが足りないとあからさまに与ダメージが小さいかつ被ダメージが大きくなり、ボス戦だと想定のレベルより低い場合、明らかに倒せないだろうというようなバランスでした。逆に言えば適正レベルかどうか分かりやすいのですが。

属性の相性も、後半あたりのボスでこの要素がかなり大事になってくるのですが、その後のボス戦では特にそういった要素は気にしなくても良いようになり、この要素は果たして必要だったのかと思ってしまいます。一番えっ!?と思ったのは、ボス戦によっては魔法が使えない場合があること。事前に分かるようになっている訳ではないので、ボス戦のためにせっかく魔法を用意しても、意味がなくなってしまうことは何度かありました。

『聖剣伝説2』みたいに魔法をガンガン使えるとなると、魔法ばっかり使うことになってしまい、アクションRPGとしての面白さが薄れてしまうということへの対処法だったのかもしれませんが、ちょっと強引すぎるやり方だなあと。

天地創造 戦闘画面
戦闘中の画面

ストーリー周り

現実の地球そのままの世界で、「天地創造」というタイトル通り、大地の創造から動植物、そして人間の歴史を俯瞰する壮大なストーリーになっていて、クインテット社RPGの特徴とも言える、哲学的なテーマも内包しています。

序盤は大陸の復活と壮大なところから始まることもあり、その辺りは演出もゴージャスに魅せています。中盤の動植物の復活あたりも、生きることの厳しさを伝える良いストーリーになっているのですが、終盤がちょっと色々と難ありな感じでして・・・

というのも終盤になってくると、イベントを進めるために次は何をすればいいのか、途端に分かりにくくなっているんですね。ふんわりした内容しか教えてくれない上、船とか手に入れた後だと、なまじ色んな所に移動ができてしまう分、次はどこに向かえば良いか分からなくなり、その結果色んな場所を彷徨って時間がかかってしまうみたいなことが頻出しました。かけらを集めてこいというイベント以降は本当に苦労した・・・ペンギンのところとかどうすれば良いか分からず、何度もメゲそうになった。解決したときはきちんと伏線はあったことが分かるのですが、ストーリーに影響しないレアアイテム入手イベントならともかく、メインストーリーを進めるイベントは、もう少し分かりやすくしてほしいですわ。

ストーリーも、そのかけら集めあたりから打ち切り漫画のごとくスピーディーな展開になって、ダンジョンも短めになった上、ボスもあまり出てこなくなり、また目下主人公の大ボス的な立ち位置の敵も、最終的には倒したりすることもなく自滅して死んでいくというビックリな内容。さんざん凄い敵だと演出しておきながら、戦いすら無かったってのは、本当笑うしかなかった。その後もラストダンジョンが存在しないので、いきなりラスボスに挑めるという省エネ設計。序盤の丁寧でゴージャスな演出からの落差が凄いというかヒドい。制作予算が途中で無くなったのかと真剣に思ってしまうくらい。

ヒカリとヤミのなんたらとか、どんでん返しな展開もあったのですが、打ち切り漫画のスピーディーな展開故に説明不足のため、なんだかよく理解できないままエンディングを迎えました。こういうよく分からない感じになったら、もう深く考えないでゲームのノリにこっちが合わせるしかないんや。

天地創造 船移動画面
船で移動中。船を手に入れたあたりからイベント進行やストーリーが難しくなります。

とまあ否定的に書いていますが、エンディングは素晴らしかったです。ラスボスを倒した後、神様みたいな存在から主人公の存在は消えてしまうと言われる衝撃的な展開。ただまあ頑張ったから、今日一日だけ故郷の村で最後の時を楽しんでこいとか言ってます。正直鬼やなと思いましたよ。残酷な優しさというか。

とはいえそんな状況だからこそ、故郷の村での平和な日常のやりとりが心にしみますし、あえてこの場面をプレイヤーに操作させるようにしたのは本当にいい演出でした。平和なひと時を取り戻すために始まった冒険だったのに、その平和なひと時を自分自身の手で終わらせないといけないという、葛藤や切なさ、やるせなさをプレイヤーにも感じさせてくれます。本当ベッドにいくのがなかなか踏ん切りつかなくなるんですよ。

可能性を感じたゲーム

割と否定的な内容が多かったのですが、演出の豪華さやアクションRPGとしての高い完成度、壮大で切ないストーリーと、巷で名作と言われる理由も納得できるゲームです。だからこそ詰めが甘い部分が目立ってしまったというか。

『ソウルブレイダー』『ガイア幻想紀』、この『天地創造』を含めたクインテット三部作は、個人的にファミコン時代の『ファイナルファンタジー』三作みたいな印象を受けるんですよね。FF1~3も面白い要素がたくさんあるゲームでしたが、同時代のドラクエ1~4に比べると、やはり大雑把なところや詰めの甘さを感じるところがありました。

クインテット三部作も同様に、同時代のドラクエ5~6やFF4~6に比べると、完成度は一枚落ちる感じでしたし、この『天地創造』が発売された時期は、ドラクエ6やクロノトリガーなど大人気RPGがひしめき合っていた時期だったので、なかなか日の目が当たりにくいという不運な部分もありました。

ただそのFFがSFC時代で大人気シリーズになったように、クインテットも三部作を制作したノウハウを生かして、PS1時代でもアクションRPGを作り続けていれば、FFのような大人気RPGを作れる可能性はあったと思います。そんなポテンシャルをクインテット三部作、特に『天地創造』に感じました。同じ時期に発売されて、同じように埋もれてしまった感のある『テイルズオブファンタジア』が、テイルズシリーズとしてPS1時代に大人気シリーズになったみたいに。

ゲームを作り続けるというのは、質の良いゲームを作っていけば良いという単純な話ではない、難しい部分があるということでしょうね。



P.S. ラスボスが村長っていうRPGは、現在においてもすげえと思うわ。色んな意味で(笑)