お気に入り度 Released Sep 1993 |
1.クリスピー
2.夏が終わる
3.裸のままで
4.君が思い出になる前に
5.ドルフィン・ラヴ
6.夢じゃない
7.君だけを
8.タイムトラベラー
9.多摩川
10.黒い翼
スピッツは良くも悪くも音楽性があまり変わらない安定したバンドというイメージがありますが、デビューから今回紹介する『Crispy!』までは目まぐるしく音楽性を変化させていまして、パンキッシュな1st、フォーク/サイケの2nd、室内楽のミニアルバム、グランジ・シューゲイザーの3rdとやりたい放題。当時の人はどういう音楽性のバンドなのか、さぞ捉えづらかったでしょうね。
そして今回の4枚目の『Crispy!』は、そんなやりたい放題な方向性から一転して、どポップな当時の売れ線サウンドに変化しました。現在のスピッツみたいに透明感のある美メロが響くポップさではなく、ホーンやキーボードなどバンド以外の外部音がガンガン入ったとっても華やかな音楽でして、みんなが期待するスピッツと思って聴くと圧倒されるほど。
デビューからの活動から分かる通り、初期のスピッツは中庸という言葉を知らないのかというほど極端な変貌ぶりでしたので、ポップで売れる音楽を作るという方向性に全力を出したところ、上述の通り華やかで明るいサウンドになり、歌詞もストレートに伝わるような内容に変化しました。そんなことですごく頑張ってる感があるけど、逆に言うと無理している感もあり、そんなところがこのアルバムでよく評されている"オーバープロデュース"な部分なのでしょうね。
そんな無理している感によってスピッツらしさが少ないということで、スピッツの作品中あまり評判がよろしくないアルバムなのですが、このアルバムならではの要素も結構あって意外と侮れない作品ですよ。
当時の売れ線サウンドということで、リアルタイムで追っかけていた人にとってはあまり面白くない作品に映ったのかもしれませんが、ホーンやキーボードで豪華に聴かせるアレンジって、現在だとそんなに無い印象なので、後追いで聴く人にとっては結構面白く聴けて、またニュートラルにこのアルバムを評価できるような気がします。90年代後半から現在の売れ線サウンドはつまらんくらいストリングスを大々的に使うアレンジばかりだから、こういった華やかなサウンドは個人的に新鮮でした。
「裸のままで」はそんな華やかなアレンジが目いっぱい聴ける好曲ですし、「夢じゃない」も後の名バラード曲と並び評されても良い感触の曲だと思います。後のスピッツに繋がりそうなギターポップの「タイムトラベラー」が私のお気に入り。このアルバムで一番有名な「君が思い出になる前に」は当時は評判良かったようですが、今ではむしろ一番時代がかって聴こえる印象です。
ポップな音楽を目指しただけあって、どの曲も耳に残る印象。シンプルで地味な音楽性であるスピッツの場合、こういったインパクトのあるアルバムってあんまり無いので、結果的にスピッツ作品の中でも独特な立ち位置を確保した作品になっています。