Dead Flowers

音楽ジャケ特集その2 クリエイションレコーズ

なんか意外と好評らしいアルバムジャケット特集第二弾。今回は90年代イギリスで一世を風靡したクリエイションレコーズのジャケット集。

クリエイションレコーズの美術担当と相性がいいのか、このレーベルのジャケットが私にとって好きなものが多いんです。写真一枚をシンプルに見せたジャケットが多いのですが、逆にそのシンプルさがジャケットの魅力をストレートに伝えているのかもしれないです。


My Bloody Valentine

轟音ギターとノイズでサイケデリックな音像を作り上げるシューゲイザーというジャンルを築き上げた偉大なバンド。ジャケットはバンド自身の音楽を視覚化したような雰囲気があり、シングルは官能性、アルバムは不明瞭という方向性で、それぞれ別々のテーマに基づいてジャケット作成されていた節がある。枚数少ないので偶然かもしれないけど。

single「You Made Me Realise」

You Made Me Realise ジャケット

名曲「You Made Me Realise」をリードトラックに添えたシングル。女性のモノトーン写真ながら、首元に花束とナイフが添えられているのが不穏な感じ。このシングルは正にシューゲイザーと言えるノイジーで殺伐とした曲もありながら、ギターポップ的な甘めの曲もあったりして、その辺りが花束とナイフとして表現されているのかなと思ったり。女性の目が焦点定まっていない感じはサイケ感ありますね。


single「Feed Me With Your Kiss」

Feed Me With Your Kiss ジャケット

これも女性のモノトーン写真ですな。ゴスメイクの気怠く見下ろしている女性は、ノイジーなギターで音を塗りつぶしながらも、どことなく醒めた感じがあるこのバンドの音楽に合っていますね。おそらくこの女性はバンドメンバーのビリンダ・ブッチャーかと思われます。裏ジャケットもメンバーのコルム・オコーサクっぽいし。


album「Isn't Anything」

Isn't Anything ジャケット

バンドメンバー全員の写真なのですが、露光オーバーでほとんど顔が見えないという。ノイジーなギターは若干抑えられているけど、荒涼なサイケ感が作品全体に詰まっていて、ジャケットのように真っ白で不鮮明な印象があります。


single「Glider」

Glider ジャケット

ディープキスの写真を加工したもので、イラストチックな感じがありマイブラにしては異色のジャケット。ダンスビートとの融合を図った「Soon」、フィードバックノイズが荒れ狂うインスト「Glider」と、新機軸の音楽性を打ち出していて、これまでのマイブラとは違う雰囲気をジャケットにも表現しているのは考えすぎか?


single「Tremolo」

Tremolo ジャケット

陶酔している女性の写真で、ピンクの配色や不鮮明な写真もあって『Loveless』前夜という雰囲気。『Glider』にも当てはまることだけど、ジャケットのような官能的な雰囲気を帯びた音楽が、この時期におけるマイブラの大きな特徴だったと思う。


album「Loveless」

Loveless ジャケット

写っているのはフェンダーのジャズマスターというギター。ピンク色で不鮮明に写っているジャケットはまさしくこのアルバムの音楽を表していますね。甘いメロディと華やかな外部音、うねりがさらに大きく抽象的になったギターサウンドは今でも新鮮に聞こえる。金字塔と言えるアルバムなので、このジャケットをオマージュ的に使っているミュージシャンも結構いる印象。



Ride

マイブラと双璧をなすシューゲイザーの代表的バンド。同じレコード会社にシューゲイザーの二大巨頭がいたなんて、90年代初めのクリエイションレコーズは本当に神がかり的なものがあったと思う。繊細さと攻撃性、清涼感と、大人になる前の若者が持つ青臭い美しさがジャケットにも表現されているように思います。


single「Ride」

Ride ジャケット

赤いバラが敷き詰められた印象的なジャケットで、通称赤ライドと呼ばれるシングル。代表曲の一つ「Chelsea Girl」を中心に、初期衝動が強く出た轟音ギターサウンドが特徴。激しくかき鳴らされるギターとワウサウンドがいいですね。華やかで勢いのある音楽性はまさに赤いバラのごとく。


single「Play」

Play ジャケット

黄色にフィルターをかけた水仙花のジャケットがこれまた美しく印象的。通称黄ライド。出世作「Like A Daydream」収録。ライドの特徴であるコーラスワークが堪能できる一枚。ここ日本でもこのシングルで期待のニューホープとして一気に注目されたみたいです。


album「Smile」

Smile ジャケット

上記の「Ride」「Play」2枚のシングルを収録した編集盤で、通称青ライド。まだアルバムを出したことが無いにも関わらず、こういった編集盤が出るくらい、バンドへの注目度が高かったことが伺えます。このアルバムをもって花ジャケットは終了。この段階でいったん一区切りつけた感じ。1stアルバム『Nowhere』とは違う、デビュー初期だからこそ出せた一瞬の瑞々しい魅力を、花ジャケットで表現していたように思います。


single「Fall」

Fall ジャケット

このシングルから新しく海ジャケットシリーズに。アルバム『Nowhere』の先行シングルで、通称ペンギンライド。マイブラの『Isn't Anything』もそうだけど、シューゲイザーの特徴であるギターノイズとリバーブが、荒涼感や寒々しい印象を受けるんですよね。吹雪で霞がかった多くのペンギンのジャケットは、ペンギンのかわいらしさと厳しい雪の寒さや美しさという点で、ライドの特徴である甘いメロディと殺伐としたノイジーサウンドを表現しているように思います。


album「Nowhere」

Nowhere ジャケット

一面に広がる海と波が印象的な、通称波ライド。ビッグウェーブが起こる寸前であったバンドの大きな勢いを表しているようであり、方向感覚を失いそうになる一面の海や、津波の前触れを思わせる波のうねりが不穏な印象を与え、まさに楽曲「Nowhere」を見事に表現したジャケットです。ただそのアルバムタイトル曲「Nowhere」はアルバムに収録されず、シングル『Fall』のB面曲になっています。ジャケット作った人もビックリだったろうなあ。ジャケットのモチーフにしたタイトル曲がアルバムに収録されていなかったんだから。


single「Today Forever」

Today Forever ジャケット

口を開いたドアップの鮫がインパクト大の、通称鮫ライド。映画「ジョーズ」みたいっすね。収録曲はアルバム『Nowhere』を引き継いだ、少し内省的な音楽性で、ジャケット画も『Nowhere』のジャケットにある海から顔を出した鮫という風にも読み取れなくもない。そのため『Nowhere』と地続きの印象を与えるジャケットになっています。