Dead Flowers

The Beatles「Esher Demo」

Esher Demo ジャケット

お気に入り度
★★★☆

Released Nov 2018

ジャケットとリリース情報は、
『The BEATLES』の50周年版を表記。

1.Back In The U.S.S.R.

2.Dear Prudence

3.Glass Onion

4.Ob-La-Di, Ob-La-Da

5.The Continuing Story Of Bungalow Bill

6.While My Guitar Gently Weeps

7.Happiness Is A Warm Gun

8.I'm So Tired

9.Blackbird

10.Piggies

11.Rocky Raccoon

12.Julia

13.Yer Blues

14.Mother Nature's Son

15.Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey

16.Sexy Sadie

17.Revolution

18.Honey Pie

19.Cry Baby Cry

20.Sour Milk Sea

21.Junk

22.Child Of Nature

23.Circles

24.Mean Mr. Mustard

25.Polythene Pam

26.Not Guilty

27.What's The New Mary Jane

今回紹介するのは『The BEATLES』、通称ホワイトアルバムを制作する前に録音したデモ音源集。

偉大なビートルズのレビュー第一弾がデモ音源ってどうなんでしょうか。悪かったと思ってるよ。けどこんなひねくれ者にしてしまったのは君なんだよ。


ホワイトアルバムという完成品があるのに、デモ音源なんて未完成品を聴く価値があるのかと思うかもしれませんが、そこはさすがのビートルズ。デモ音源故にアコースティックギター2,3本とその辺にあったパーカッションのみという簡素なアレンジになっているのですが、そのおかげでじっくり作りこんだホワイトアルバムとはまた違う趣きが出ています。

聴いてまずビックリしたのが、デモながら曲の構造がすごくしっかりしていること。プロの制作現場が実際はどういうものか知りませんが、録音スタジオで曲を練り込んでいくイメージがあったので、完成版と曲構造があまり変わらないものが多くて驚きでした。偉大なソングメイカー達はデモだけでここまでのものを作るものなんだなあと思いました。原曲が弾き語り曲という理由もあるけど、「Blackbird」や「Julia」とかほぼ完成してるレベルやん。

そしてアコースティックギターを中心としたアンプラグドなアレンジで、デモ特有のリラックスした雰囲気から、アシッドフォーク的な倦怠感やサイケ感、妙なハイテンション感があるのが魅力的。

華やかなピアノのスカ音楽である原曲が不気味なくらい陽気なギターフォークになった「Ob-La-Di, Ob-La-Da」、口笛が奇妙な雰囲気を感じる「Piggies」、アコースティックになった分原曲よりブルースっぽくなった「Yer Blues」などが印象的ですね。

そして一番印象的だったのは「While My Guitar Gently Weeps」。原曲はエリック・クラプトンによる泣きのギターが聴きどころですが、ある意味そのギターのせいでちょっとクサい部分もありました。このバージョンはそのギターが入っていない分素っ気ない所はありますが、弾き語りのギターワークのおかげか幽玄な曲になっていて、個人的にかなり魅力的な曲になっています。


このデモで当時のビートルズがどういった意図を持ってホワイトアルバムを制作したのかが垣間見られるところがあり、ボブ・ディランの『John Wesley Harding』で見せたアコースティック回帰に同調するかの流れにも見えたり、前作『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』や前々作『Revolver』といった、複雑なスタジオワークによる楽曲作りは止めて、シンプルな楽曲作りを志向したりなどなど・・・色々考察し甲斐のあるデモです。

昔は海賊版でしか聴けなかったデモですが、現在はホワイトアルバムの50周年版に丸々収録されてるので、そちらから聴くのがオススメです。ホワイトアルバムまたはビートルズが好きな人は一度お試しで聴いてみてください。結構良いよ。