Dead Flowers

Panasonic 「mova P504i」

初めてのものが結果的に一番好きなものだったということはよくある。これは思い入れの深さもあるし、初めてみたものが親だと思う刷り込みというか基準点になっているのが理由なのかもしれない。今回紹介する携帯電話のP504iも、今思えばスマホを含めその定義に当てはまる一番好きな携帯電話だったし、客観的に見ても優れた携帯電話だったと確信している。

私がP504iを手に入れたとき、初めてのケータイだったのですごくワクワクしていた。機種を選ぶ際では特に予備知識があったわけではなかったが、P504iを見たときに他機種を圧倒するほどの本体の薄さと、ボタン一つでパカッと開くワンプッシュオープンを見て(当時は二つ折りの携帯電話が主流だった)、すごくユニークで面白いと思って選んだ記憶がある。そしてその直感は間違っておらず、使っていくうちにすごく魅力的な携帯電話だと思うようになった。


P504i 二つ折り時
P504i 二つ折り時
P504i オープン時
P504i オープン時

その魅力としてまずは本体の薄さ。当時のケータイは二つ折りだったこともあり、閉じているときは結構分厚くなってしまい、ポケットに入れるとこんもり膨れ上がってしまうものだった。けれどもP504iはすごく薄かったので、ポケットに入れてもそれほど邪魔にならなかった。他メーカー製品が機能が増えるに連れて本体が分厚くなっていくにもかかわらず、P504iはその流れに逆らっているような作りになっているのが痛快だった。

そして大きな特徴だったワンプッシュオープン。これはヒンジの外側左にボタンがあり、ボタンを押すと二つ折りのケータイが物理的に開くというもの。今となってはなんてない機能かもしれないが、当時は二つ折りを開くには両手を使って開けるか、アンテナ部分に指を引っかけて弾いて開けるといったやり方だったので、開ける際には少し手間がかかっていた。しかしワンプッシュオープンだったら片手でボタン押すだけでスムーズに開けることができるし、電話の着信のときもワンプッシュオープンだけで電話とることもできる。いちいち電話ボタン押す必要なし。凄く利便性が高くスマートな機能だった。


P504i ワンプッシュオープン
P504i ワンプッシュオープン

ハードだけでなくソフト周りも魅力的だった。液晶画面もその一つ。かつてのケータイは暗い所や日差しの下では画面が見難かった。しかしP504iの画面はすごく明るかったので、そういった状況下でも問題なく見ることができた。

そしてアプリ起動の早さも特筆すべき点だった。他機種よりダントツで早い。他が4~5秒かかるのにP504iは1秒くらいで起動できて、当時としては異様といっていいレベルだった。周りの人もここに一番驚いていた記憶がある。アプリに限らず文字入力やボタンなどレスポンスの反応が良く、動作自体がキビキビ動いていたのですごく快適だった。

あとこれはmovaのPシリーズ全てに当てはまるのですが、クリアボタンが無いのが特徴でした。右上のボタンがクリアボタンの役割を果たしてくれる仕様。クリアボタンが無くても使い勝手は全く問題なく作られており、必然性のないものは極力削っていき、シンプルな操作性で使いやすくという意図が感じられます。

これはおまけみたいなものですが、メニュー画面やアイコンをカスタマイズすることができた。2chで配布されていたスキンを使って着せ替え感覚で変えていたのが楽しかったです。


P504i ボタン周り
P504i クリアボタンがない

ここまでP504iの魅力を思いつく限りつらつらと書いてみて思うのが、P504iはそれまで抱えていたケータイの欠点をつぶしつつ、薄さやワンプッシュオープンという新たな価値を加えた画期的なケータイだったと今更ながら思えます。またケータイで本当に必要なものは何かという本質をはっきり捉え、無駄をそぎ落として使い心地を追求したケータイだったんだなと。その後のP504iSやP505iはP504iをベースにカメラやカラーの背面液晶という機能を付けていたが、それらはケータイの本質的な部分、つまり連絡をとるということに全く関係しないと思うし、それらの機能を入れた結果として少し本体も分厚くなってしまい、ハード面ソフト面においても、P504iと比べると焦点がブレてしまったように感じる。


P504iが発売された当時、各メーカーが出すケータイはどれも個性的だった。ハードのみならずソフトも各メーカーそれぞれが作っていたので、今でいうiPhoneみたいに、メーカーの個性や方針をケータイに表現できる余地があった。Docomoの場合は、NECやPanasonic、三菱、富士通、シャープ、SONYとどれもメーカーの特色があった。王道のNEC、画面が美しいシャープといった具合に。そのためどのメーカーのケータイを選ぶかでその人の個性や志向が少なからず分かったものだった。

しかし次世代のFOMA時代になると、性能自体は上がっているはずなのに動作はもっさりになり、この名機を作り上げたPanasonicはソフト開発をやめてしまい、NEC開発のソフトウェアになったことでPanasonicの個性は激減し、クリアボタンも追加される始末。そして現在ではスマホ時代になり、日本企業の存在感は消え失せ、実質iPhoneとAndroidの2択という形になってしまいました。こう振り返ると時代を経るにつれて、所有することやどれを選ぼうかという点ではつまらなくなってしまったなあと感じる。

話がそれてしまったが、P504iは最高のケータイだった。私が持っていたシルバー色は、青みがかったシルバーで青色のボタンというカラーリングで、色味も私好みでした。スマホ全盛の今、ケータイはただのなつかしアイテムとなってしまったが、当時の日本企業が総力を結集して、企業の美学や技術を詰め込んだ商品であったことは、忘れないでおきたいと思う。



画像は以下から引用しています。

ワンプッシュオープンボタンを初搭載 世界最薄「mova P504i」(懐かしのケータイ) - ITmedia Mobile


仕様やケータイのソフト画面を見たい場合は以下で。今となっては2002年の記事が残っていることがすごい。

ケータイ新製品SHOW CASE NTTドコモ P504i