Dead Flowers

スピッツ「惑星のかけら」

惑星のかけら ジャケット

お気に入り度
★★★★★

Released Sep 1992

1.惑星のかけら

2.ハニーハニー

3.僕の天使マリ

4.オーバードライブ

5.アパート

6.シュラフ

7.白い炎

8.波のり

9.日なたの窓に憧れて

10.ローランダー、空へ

11.リコシェ号

3枚目として発売された(ミニアルバム含めると4枚目)このアルバムは、時期的には初期に位置づけされるもので、売れ線がナンボのもんじゃいとトガりまくっていた時期のスピッツを一番堪能できる作品になっています。

発売当時海外で大人気だったグランジやシューゲイザーの要素を取り入れていて、ギターはノイジーでやかましい音で、ボーカルもいつもの透き通るような高音ボイスはなりを潜め、ダウナーな低音ボーカルに変化しています。最初の2曲である「惑星のかけら」「ハニーハニー」が分かりやすい例ですね。こう書いてみると、このアルバムは改めてスピッツらしからぬ音楽性という印象を強く受けました。

アルバムの雰囲気は一言で言うと、すごく内向きなアルバムでしょう。引きこもりすぎてエネルギーを発散できず、そのまま内へ内へエネルギーを蓄積した挙句、最後にスパークしてしまったという感じ。この説明しづらいニュアンスをどうか風に乗って伝わって欲しいと祈るばかりです。それができれば世界は今より平和になれるというのに!

スピッツの歌詞は意味ありそうでなさそうな詩的な表現が特徴的ですが、"二つ目の枕でクジラの背中にワープだ!"(「惑星のかけら」)"僕のペニスケースは人のとはちょっと違うけど"(「波のり」)と、このアルバムでは意味不明さがフルスロットルに突っ切っているのが目立ちます。なんというか、すげえな。(語彙不足)


ロック色が強いとありますが、ワンパターンにロック一辺倒というわけではなく、カントリーテイストの「僕の天使マリ」、唐突に間奏でサンバになる「オーバードライブ」、クラシックで優雅な雰囲気の「シュラフ」、サーフな「白い炎」「波のり」、シンセのループが印象的な「日なたの窓に憧れて」、完全にSFの世界である「リコシェ号」と、むしろ他アルバム以上にバリエーション豊かかも。スピッツらしい美メロディの「アパート」もございます。

新しい音楽や異ジャンルを取り入れる貪欲さ、売れ線を気にせずに自分たちにとって良い音楽を追求する若さと野心、これらの要素がうまく絡み合ったスピッツ最高傑作だとあえて断定したいです。

この後のアルバムではより多くの人に聞いてもらう方向にシフトしていくので、モラトリアムで純粋なスピッツを聞くことができる最後のアルバムでもあります。